パリ・リヨン駅
翌日、私とリリィは、駅で別れることにしたんだ。
本当は『二人で旅しない?』と言いたいところだけど、どちらもそれは口にしなかった。
「どこにいても、あたしたちは親友だから。近くにいても遠くにいても、レイが頑張ってると思ったら、あたしも頑張れる。だから、やれるところまで一人でやってみようよ」って、リリィは言ってた。
親友……
なんだか照れ臭いけど、すごく胸が熱くなった。
私も、リリィと同じことを思ったから。
リリィの鉄道パスは、フランス・ドイツ・スペイン・イタリア・スイスの5カ国限定。
私のは、ヨーロッパ17カ国を回れるパスだった。
リリィは、次にドイツのハンブルクへ、私はベルギーのブリュッセルへ、向かおうと思っていた。
「レイ、あんたに会えてよかった」
「私も」
私たちは、外国人がするように抱き合い、頬を触れ合わす挨拶を交わす。
リリィはとても慣れてたけど、私はちょっと照れ臭かった。
「それじゃ、またね!」と言って颯爽とホームを行く彼女の後姿は、やっぱり誰よりも輝いて見えた。
お互い別れの言葉は口にしなかった。
だって、これはただの始まりなんだ。
サヨナラなんかじゃない。
その思いが、私に次へ進む勇気をくれた気がしたんだ。
リリィ、私もあなたに出会えて、本当に良かった。
そうでなければ、もうこの旅も止めて、日本へ逃げ帰ってたかもしれないもの。
ここから、私の鉄道の旅が始まるんだ。
私はゆっくりと、ブリュッセル行きの列車が待つホームへと、歩き出した。