「リリィってモテそうだよね」
「はぁ?」
今度は、大きな目を見開いて、私を睨んでる。
「だって、スタイルいいし、性格もサッパリしてるし、私が男だったら、絶対好きになると思って」
「何言ってんのよ。そんな告白されても、嬉しくないわよ」
そう言うリリィだけど、まんざらじゃなさそうだ。
「でも、あんたが言うと嫌味にしか聞こえないわよ」
「え?」
「あたしも、自分では結構イケテル方だと思うけど、あんたみたいに可愛い女に言われると、ちょっとシャクよね」
「そ、そんな、私なんて……」
「レイは、きっと損してるわね。あんたみたいなのが『私なんて』とか言ってたら、女の敵が増えるだけよ。堂々としてりゃいいのよ」
「リリィみたいに?」
「そうね。まぁ、あたしまで来るとやり過ぎかもしれないけど」
そう言って、また二人顔を見合わせて笑った。
「あぁ、もう、なんでこうもイイ女が、揃いも揃って一人旅なのよね」
「ん?」
「世の中の男は、可笑しいんじゃないの、って言ってんのよ」
リリィの、冗談とも本気ともつかない言葉に、私は苦笑いをするしかなかった。
だけど、ふと隣を見ると、さっきまでスゴイ勢いで悪態をついてたはずのリリィ目から、大粒の涙が溢れててて、私は思わず目を見開いた。
「ちょ、ちょっとリリィ、どうしたのよ?」
真っ直ぐ正面に見える、ライトアップされたエッフェル塔を見つめたまま、リリィはゆっくりと口を開いた。