春がやってきた。
私の一番好きな季節だ。
新しい出会いの予感に胸が躍る季節
日本はきっと桜が満開で一番美しい景色が広がっているに違いない。
ここはまだ肌寒いけど、珍しく晴れ渡ったどこまでも青い空に、気持ちも明るくなるようだ。
「ねぇ、アキ、また新しい季節が巡ってきたよ。なんだかワクワクするね」
そよぐ風に乗って隣のバラ園から、春の訪れを告げる柔らかい香りが漂ってくる。
ここでこうやってアキと話をする時間は、私にとっては一番心落ち着く時だ。
アキは普段は一人が好きだったみたいだけど、そんなことお構いなしに、私は話しかけるんだ。
それでもきっとアキは優しく微笑んで私の話を聞いててくれる。
そんな気がするから……
「レイ、そろそろ行こうか」
「えぇ」
私は、はちきれんばかりに大きくなったお腹に手をやりながら、ゆっくりと立ち上がった。