リリィは卒業後、出版社に就職したんだ。
書く側ではなく、書かせる側だったけど、リリィの性格にはとても合った仕事だったのだろう。
時に厳しく、時に優しく、多くの作家さんを支え、世にたくさんの作品を送り出した。
でも、書くことを諦めたわけじゃなかったんだ。
ジュンのプロポーズを受け、大阪へやって来た彼女は、今度は未来の作家さんを養成する学校の講師を始めたそうだ。
リリィにはそれもピッタリだよね。
それに、リリィの歯に衣着せぬ物言いは大阪の風土にも合っていたようで、関西の女性をターゲットにしたサイトで、連載コラムのコーナーを持ってるんだって。
その痛快な語り口が好評で、近く本になって出版されると言うから大したものだ。
でも、彼女は言うんだ。
「あたしはまだ夢を諦めてないわよ。いつか、小説を書くの。いつまでかかるかわからないけど、諦めなければ夢は叶うって、あんたが教えてくれたのよ。だから、いつか、きっとね」
リリィ、違うよ。
夢を追い続けることを教えてくれたのは、リリィだよ。
いつも真っ直ぐなリリィの背中が、私にはまだまだ遠いよ。