本当にあの旅から十年が過ぎたんだ……
ベルリンで夢を語った通り、ジュンはお父さんの会社を継いで、世界に誇れるオンリーワン企業へと押し上げた。
ジュンの会社でしか作れないもの
ジュンにしかできないこと
「人の歌を歌うことしかできない」なんて言ってたジュンはもうどこにもいない。
ジュンにしか出来ないことを、彼はやってのけたのだ。
そして、ジュンは必死で家族を守ってる。
両親も、兄妹も、そして新しい家族となったリリィや怜も―――
ジュン、今ならわかるよ。
お父さんがあんなにも必死に働いてくれてた意味が
きっと、ジュンもお父さんと一緒なんだね。
必死で守るべきもののために毎日闘ってるんだね。
でも、ジュンはこう言うんだ。
「俺なんか、おとんに言わせたら、まだまだ半人前やって。俺、どんだけ頑張ったらええねん」
そう言って屈託なく笑うジュンは、一緒に旅した少年のようにも見える。
でもね、今のジュンの笑顔がもたらしてくれるのは、底知れぬ安心感と幸福感なんだ。
リリィを見てればわかるよ。
どれだけ二人が、いや三人が幸せで、どれだけジュンが頑張ってるか……
「俺まだまだリリィがおって、ようやく一人前やからな。いつかおとんを越える日まで、頑張らんとな」
ジュンの夢はまだまだ終わらない。