「ねぇ、レイ。あの時の切符、持って来た?」
切符……
「えぇ、もちろん」
私はバッグの中にしまっていた一通の封筒を取り出した。
同様に、リリィの手にも、ジュンの手にも封筒が握られている。
そして、ハルも……
「はい、ジュン」
「おおきに、ありがとう」
これは十年前のジュンから今のジュンへのて手紙だ。
そしてジュンはリリィに、少し照れ臭そうに手渡した。
リリィのアキの手紙はハルへと。
そして、ハルは私に、私の書いた手紙を手渡してくれた。
最初に封を切ったのはジュンだった。
「ねぇ、ジュン、なんて書いたのよ?」
興味津々に覗き込むリリィから隠すように、ジュンは自分が書いた手紙を読み込んだ。
「“十年後の戸部純也へ”やって。これは、めっちゃハズイなぁ」
「いいじゃないの!ちょっとみんなにも聞かせてあげなさいよ」
すっかりジュンはリリィの尻に敷かれているようだ。
二人は互いに手紙を読み合い、まるで十年前と同じようにはしゃいでいた。