「僕も二人兄貴を亡くして、家族みんなが荒んだ心を抱えてた。それでも、僕らが立ち直れたのは、やっぱりレイのおかげなんだ。アキ兄が見つけた希望の光を、僕らも知らず知らずのうちに追いかけてたんだ」
ねぇ、アキ、覚えてる?
アキとの旅の最後の日、私、アキに誓ったよね
アキは「自分の人生は自分だけのものなんだ、だから、思うがままに生きればいい」って
私は「それなら、誰かのために生きたい」って言ったら、アキは優しく頭を撫でて「レイらしいな」って言ってくれたよね
アキが“私らしい”と言ってくれた生き方は、間違ってなかったんだね?
「ハル、アキは病気と闘い抜いたんだよね?最期まで生き続けたんだよね?」
「あぁ。アキ兄は最期まで戦ったよ。最後の最後まで決して諦めずにね。『三人とミュンヘンで絶対再会するんだ』って、そう言ってたよ」
そう言うとハルは傍らにあった小さな紙袋を差し出したんだ。
「僕の母さんからレイに」
そう言って渡された紙袋から出てきたのは、手作りの石鹸だったんだ。
懐かしい匂いがした。
いくつかあったので、リリィやジュンにも手渡す。
二人もその匂いに気付いたようだ。