「……ハル、私が十年間送り続けたEメールって……」
「あぁ、アキ兄に届いたのは2004年の3月までなんだ。レイが初めて国境なき医師団で看護師としてナイジェリアへの派遣が決まったと報告してくれたメール。あの届いた翌日、アキ兄は旅立ったんだ」
「じゃあ、私に返信をくれてたのは?」
「ごめん、僕なんだ」
ハルは私から目を逸らすことなく語ってくれる。
まだ、どこかで信じきれていないのに、ハルの真っ直ぐな瞳は、それは真実であることを証明していた。
「僕に頼み事なんかしたことなかったアキ兄の最初で最後の頼みだった。『レイが夢を見失わないように、見守り続けて欲しい』って」
そんなことって……
この十年、アキからのメールでどれだけ励まされたかわからない。
いつも私の心を奮い立たせてくれた、心のこもったメール
私の頭の中が、処理能力オーバーでショートしてる。
あまりの衝撃で涙も出ない。
いや、私の心はまだその事実を受け入れてないだけかもしれない。
だった、もう、この世にアキがいなかったなんて……