「もしかして、リリィやジュンは知ってたの?」
私の問いに二人は目を合わせて頷いた。
「俺はさ、毎日同じ部屋で寝てたやろ?薬飲んでたんも何度か見たしな。でも気付いたんは、ローマ過ぎてからやで。でもアキは『ただの貧血やから、心配せんでええ』ってずっと言い張ってた」
「あたしは……二人でロマンティック街道を行った時があったでしょ?あの時に一度、アキが眩暈おこして倒れたのよ。それで無理矢理聞き出したの」
「それなら……」
「レイには絶対言うな、って言われたのよ!」
そんな……
私だけが知らなかったなんて。
そんな疎外感に苛まれる私に、ジュンは優しく諭してくれた。
「アキかて男やん。そんな好きな女の子の前で、格好悪いところ見せられへんやろ?」
私の前にいたのは、いつも強くて、優しくて、頼りになるアキだった。
「旅から戻ったアキ兄は、何故だか晴れ晴れした表情だったんだ。家族は全員、アキ兄が自暴自棄にならないかって心配したのに。それどころか『絶対病気に打ち勝て、生き抜いてやる』って、そう言ってた。今まで物静かなタイプだと思ってたのに、病気に罹ってからのアキ兄は、とても生きることに対して貪欲で、真っ直ぐで、熱かったよ。でも、その理由がわかった。レイ、君のおかげだ」
「私?」
「あぁ。レイに出会って、リリィやジュンと共に旅をして、アキ兄はもっと生きたいって思ったんだ。生きて、生きて、生き続けたいって」