「もともと自由奔放でマイペースな人だったから、僕は全然気にしてなかったけど、母さんは取り乱して大変だったよ。きっと気付いてたんだろうな、様子がおかしかったアキ兄のこと」
嘘
嘘だよ
あの時のアキが病気だったなんて……
そんなこと、ありえないよ……
「アキ兄は自分の体調の変化に気付いて、一人で病院に行ったらしい。そこで、一番上の兄貴のことを思い出したんだろう。きっと、自分が兄貴に重なったに違いない」
その先に待つのは……
「でも、いなくなって三日後、突然電話がかかってきたんだ。『今、ハイデルベルクにいる、少し旅をしたら必ず帰るから心配しないで』って。母さんはきっと最悪の事態も想像してたんだろうけど、アキ兄は約束通り帰ってきたんだ。そして、ちゃんと専門の病院で検査も受けて、自分も兄貴と同じ病気であることを僕たち家族に報告したんだ」
ハイデルベルク
四人で旅をして、最初に訪れた街だ。
彼はあの時、何を思い、家族に連絡を取ったのだろう。
私はアキがそんな体調だったなんて、全然気付かなかった。
でも……