「でも……悪夢はまた僕たち兄弟に、家族のところにやってきた」

「それって……」


ハルはゆっくりと私の方へ顔を向けると「あぁ」と一つ頷いた。





「アキ兄も同じ病気に罹ったんだ」





そんな……

目の前が真っ暗になるようだった。

アキも再生不良性貧血に……


「いつから?」


自分の掌から、どんどん熱が引いていくのがわかる。

冷えきった手が少し震えていて、私は必死で両手を祈るように握りこんだ。


「僕も始めは気づかなかった。でも、アキ兄が二十歳の夏、突然『旅に出る』と言っていなくなったんだ」



あの夏だ。

私たちが出会った、あの忘れられない夏―――