「僕には二人の兄がいるんだ。男ばかりの三人兄弟だった。みんなの知ってるアキ兄は次男なんだ」
ハルの顔は穏やかだ。
十年前のアキの面影を少し残した優しい表情が、暖炉の明かりで浮かび上がっている。
その横顔に釘付けになったまま、私はハルの言葉の一つ一つを聞いていた。
「僕が12歳の時だった。一番上の兄貴が突然ある病気に罹ったんだ。そして、その二年後に亡くなった」
思わず息を飲んだ。
リリィとジュンも驚きを隠せない表情だった。
「それって、何の病気だったの?」
リリィが悲痛の表情でたずねた。
「Aplastic anemia……」
“AA”
日本語で言えば……
「“再生不良性貧血”……」
「はぁ~?貧血くらいで人が死んだり、そんなこと……」
私の呟いた病名にジュンは驚いていたけど、再生不良性貧血はただの貧血とは訳が違う。
ハルは私の目を見て一つ深く頷くと、ジュンに説明を施した。