朝食を済ませた私たちは、早速市内を歩き始めた。
リリィは、すっかり昨日のことなんて忘れたみたいに、何事もなかったようにいつも通りで、私の方が拍子抜けしてしまった。
まぁ“いつも通り”と言っても、昨日会ったばかりで、本当の彼女がどんなものかはわからないが、初めて会った時の印象のままということだ。
昨日とは打って変わっての快晴。
曇りのパリも良かったけど、この街には青空も似合うようだ。
明日にはパリを出発しようと思っている私としては、とにかくいろんな所を見ておきたかった。
リリィもそれは同じらしく、二人で見たい場所を出し合い、そこをメトロと徒歩で見て回ることにしたんだ。
まずは、シテ島に聳え立つ、ノートルダム寺院を目指した。
セーヌ川の岸辺に建つその大聖堂は、圧倒的な存在感でそこに佇んでいる。
何百年とパリの街を見守ってきたそれは、威風堂々としていながらも美しいフォルムで『ノートルダム=我らの貴婦人』に相応しい優美さを持ち合わせていた。
「ここの上から、パリが四方八方見渡せるんだって。」
そう言うリリィに連れられて、私たちはたくさんの観光客に混じって塔を登った。
長い長い人の列について辿り着いたそこは……