最後に見せてくれたアキの笑顔が、いつまでも脳裏に焼きついて離れない。
優しくて、温かくて、大好きな笑顔……
空港行きのホームへと歩くアキの背中が少しずつ小さくなっていく。
「アキ、ありがとう。またね」
たくさんの人の往来の中で、届くなんて思ってなかった私の叫びが届いたかのように、アキは最後に振り返り、手を振ってくれた。
私も精一杯振り返した。
アキの姿が列車の中へと消えると、ようやく駅構内の喧騒が耳に届いた。
そして、私もマドリード行きのホームへと歩き出した。
久しぶりの一人旅が始まった。
でも、何故だか寂しさはなかった。
それよりも新しい出会いの予感に胸が躍るんだ。
だって、旅が楽しいものだって、アキやリリィやジュンが教えてくれたから。
それに、私はもう一人じゃないから……
列車は静かに、マドリードを目指し走り始めた。