サンツ駅は今日も人でごった返している。

マドリードへ向かうビジネスマン、私たち同様次の目的地を目指すバックパッカー、ヴァカンスへ向かう家族連れ……



私たちは改札を通り、それぞれのホームへ向かう別れ道に、向かい合わせで立っていた。

もう涙は流さない。

だって、アキには笑顔の私を覚えていて欲しいから



「アキ、本当にありがとう」



伝えたいことはたくさんあるのに、思い浮かぶ言葉は“ありがとう”だけだ。



「あぁ」



そう言ってアキが右手を差し出したので、私もその手を握り締めた。

と、思ったら、次の瞬間、私はアキに抱きしめられていたんだ。

強く、強く……