アキの見つめる先には、散歩途中の家族連れの姿が映っていた。
幼稚園児くらいの元気な男の子が、鳩にパン屑をあげていて、たくさん集まり過ぎて驚いてる姿が微笑ましい。
「アキにはお仕事もあるんだもんね」
なんだか、これじゃ拗ねてるみたいだ。
頭ではわかってるのに、心がついていかない。
「そうだなぁ。でも……」
気付くと、アキに見つめられていて、回りの喧騒も聞こえないほど、自分の胸の鼓動だけが耳に痛いほど響いている。
やっぱりアキの瞳の魔力には、私はいつまでも勝てそうにない。
「でも?」
私を見つめるその瞳はどこまでも優しさに溢れている。
「どうしても、今日まではレイと一緒にいたかったから」
「え?」
アキはジーンズのポケットから、一枚のコースターを取り出したんだ。