「ベルリンでさ……あいつに襲われたりしなかった?」

「えっ?」

「だから、あの馬鹿、ジュンよ!ここぞとばかりにレイに襲ってこなかった?」


リリィの必死な形相を見ていたら、なぜだか笑いがこみ上げてきた。

だけど、そんな私を、リリィは不機嫌そうに睨みつけた。

そして不貞腐れたように私から目を逸らす。

やっぱり、リリィが羨ましいな。

なんで彼女はこんなに自分に素直なのだろうと……


「ベルリンでのジュンはね、私が入る余地なんて1ミリもないくらい、誰かさんのことで頭がいっぱいだったよ」

「……何よ、それ?!」

「わかってるくせに」

「レイが生意気になってきてる!あいつの馬鹿菌でもうつったんじゃないの?」

「ハハハ、そうかもね。でも本当だよ。ジュン、言ってた。ベルリンの壁みたいに、ある日突然リリィと会えなくなったりしたら、一生後悔するって」

「……あっそう」


そう言うリリィだけど、その横顔は笑みがこぼれていた。

多分、ずっと聞きたくて、うずうずしてたんだろう。

でも、ジュンのことになると、どうもキレが悪くなってしまうようだ。