「ここは、俺がドイツで一番好きな街だから。みんなに、見せたかったんだ」


アキはからくり時計を見上げたまま、そう言ったんだ。


「アキって、ここに住んでたの?」


リリィもからくり時計を見上げたまま訊ねる。


「いいや、住んだことはないんだ。けど、毎年クリスマスになると家族で来てた。この広場いっぱいにマーケットが出来て、その庁舎の前にはでかいクリスマスツリーが立つんだ。あの景色をみんなにも見せてやりたいな」


アキが見つめているのは、からくり時計じゃなさそうだ。

その先の過去の思い出……

とても優しい表情だった。



すると、ジュンは「そうや!」って何かイタズラを思いついた子供のように、大きな声をあげたんだ。