「Ein,Zwei,Drei,Soffer!」
(アイン、ツバイ、ドライ、ゾッファー!)



そう言い終わると同時に、ホールにいた人たちはグイっと自分のジョッキを飲み干したんだ。

私とリリィは、呆気にとられて、その様子を眺めていた。


「何なに?今の?」


興奮気味に言うリリィの横では、空のジョッキを掲げて、隣のおじさんと楽しそうに会話しているジュンの姿があった。

おじさんはもちろんドイツ語、ジュンは日本語。

それなのに、会話が成り立っているように見えるから不思議だ。


「“1,2,3,飲めー!”
 乾杯の歌の後はお約束なんだ」


アキはそう言って、ジュンを見ながら微笑んでいた。

リリィは「え~早く教えてよ!あたしもやりたかったのに~!」って本気で悔しがった。

私とアキはその様子を眺めて、顔を見合わせて笑ったんだ。