列車の中で地図を確認したところ、約束の新市庁舎前のマリエン広場までは、徒歩で20分くらい。
重いバッグパックを背負ったままだから、もう少し時間がかかるかもしれない。
約束の時間ギリギリだ。
「レイ、ここ、なかなかええ街やなぁ」
中央駅正面の噴水のあるカールス広場から、真っ直ぐに延びたノイハウザー通りは、歩行者天国になっていた。
レストランやデパートが軒を連ねる、賑やかな通りだ。
ミュンヘンの町並みは、ベルリンの勢いある力強さや、ケルンの気ままでソフィスケイトされた感じとは違って、ちょっと保守的で装飾的で華麗だ。
バロック様式の重厚な建築物もそこかしこにあり、ジュンは興味津々といった感じだけど、今はそれどころではなかった。
早く、とにかく早くマリエン広場へ―――
ジュンは、のん気に町のあちこちに目をやり、いつも通り旅を楽しんでいる風だったけど、私は広場が近づくにつれ、緊張が高まっていた。
一歩、また一歩と近づくたびに、胸が高鳴る。
そこには、きっと、リリィとアキが待っているはずだから。
私は、その歩みを力強く踏みしめていた。
そして、広場の入口付近に差し掛かった、その時だった。