「そんな時やった、おとんが倒れたんわ。一応社長やしさ、もうえらい騒ぎでな。俺、高二やってんけど、なんも出来ひんで、自分の無力さを痛感した時やった。幸い大した病気じゃなくすぐに復活してんけど、おとんの偉大さを肌で感じるには充分すぎる時間やった。俺んちさ、妹二人とおかんと、五人家族やねん。おとんはさ、そんな俺ら家族も、それに従業員の家族も、まるごと養ってるんやから、こんなところで死んでたまるかーって言うてた。守らなあかんもんが、いっぱいあるんやて。アホやろー、カッコつけ過ぎやっちゅうねん」



そう言うジュンだけど、お父さんの話をする彼は、すごく誇らしげで、眩しく見えたんだ。



「それにな、うちのおとんさぁ、たかだか町工場の社長のくせに、英語がペラペラなんやで。『今時は、英語くらい喋れな、世界へ売り込みに行かれへんからな』やて。笑ってまうけど、俺にはそんなおとんがヒーローに見えるんや。歌も好きやけど、俺にとっては、おとんの会社も家族もめっちゃ大事やねん。俺さ、歌うたうのは好きやけど、曲を作る才能はなくってさ、人の歌歌ってばっかりやねん。そやしな、出来れば会社継いで、俺にしか作られへんもん、作ってやりたいって思ってんねん。……って、ちょっと、レイ?」





なんだ。

ジュンには、ちゃんと大きな夢があるんだ。

そんなジュンの熱い語りを聞いていたら、私まで、胸がいっぱいになっていた。