「でもな、小学生ん時くらいかなぁ、おとんの仕事場で遊んどった時に、壁にスペースシャトルの写真が貼ってあるのを、見つけてん。そしたらな、従業員のオッチャンが、めちゃくちゃ誇らしげに言うんよ。『俺たちは、このシャトルを飛ばすのに、欠かすことの出来ん部品を作ってるんや』って。スゴイやろ?こんな町工場で作ってる部品やのに、これが無いと、シャトルが飛ばんって言うんやで!もう、俺、それ聞いて鳥肌がたったわ。単純やけど、おとんがカッコよく見えてなぁ」
そこまで言うと、ジュンは手すりに背中を預け、タワーの内側へと体を向けた。
私は、ただ頷いてジュンの話に聞き入っていた。
「でもな、中学、高校って進んで音楽に出会って、仲間とバンド組んで、のめり込んでもうてさ。やっぱりこんな小さな所で、町工場なんか継いでええんかなぁって思うようになったんやなぁ」
そう言うジュンの腕の中には、ケースにしまわれたギターが抱えられていた。
家業と自分の見つけた夢。
その間で、少年だったジュンは、きっと悩んだんだろう。