「おれんちな、実は会社をやってんねん。って言うても、小っちゃい零細企業やけどな。俺の育った所は、東大阪言うて、零細企業が山のように集まった所やねん。バネやらネジやら、そんなん作る町工場がいっぱいあんねんけど、おとんの会社もその一つなんや」



ジュンは、どこか遠くを見つめるように、遠い目をしている。

その瞳に映るのは、過去の自分だろうか、それともこの街の未来だろうか。



「昔はそれが嫌でさぁ。そんな小さな町工場で、汗水垂らして働いて、たかだか十人くらいの会社で社長なんて“カッコワル~”って思っとった。おとんのこと、はっきり言って、馬鹿にしとったんやな」



そう言って、ジュンは自嘲気味に笑った。