「なぁ、ベルリンってあちこちで工事してるやろ?」
ジュンの言う通り。
街中のそこかしこに、建設途中の建物が見える。
「うん、工事現場ばっかりだよね」
「壁が崩壊してから2,000ヶ所もの工事現場が出来たらしいわ」
「2,000箇所も?」
「あぁ。こないだ、アキが言うとったやろ?十年後のベルリンは、違う街になってるやろうって」
「うん」
「壁が崩壊して、九年。この街も、国も、急速に変わろうとしてるんやなぁ。十年後なんて、想像も出来へんな」
「そうだね。私たちって、この街の変わり目に、立ち会うことが出来たんだよね。なんだかすごく嬉しいな」
「そうやな」
私が、十年後のベルリンにトリップしていると、ジュンは、急に大きな声とともに振り返った。
「そうや!街を一望できるとこがあるわ、行ってみーひん?」
そう言って、地図の中のある一箇所を、指し示したんだ。