「そう。人はね、虐げられると、どんどん強くなるんだって。痛みを知る人は、人に優しくできるんだって。それって、本当の強さなんじゃないかなぁって、思うんだ」
「ええこと言うなぁ、レイ」
「そ、そんなことないよ」
ジュンが、いつもみたいに冗談っぽくじゃなく、本当に感心したように微笑んでる。
それが余計に照れ臭かった。
「ほんま、この国の人たちは強いわ。ドイツって、統一されて万々歳みたいに聞こえるけど、実はちゃうねんで」
「え?」
今度は、私が首を傾げる番だ。
思わず、ジュンの顔を覗き込んだ。
「だってな、それまで資本主義やった国と社会主義やった国が、急に一つになったんやで?生活水準や産業、社会基盤なんかの格差がめっちゃ大きかってんて。今も財政赤字は増える一方やし、失業率も右肩上がりや」
「そんなの、知らなかった。だって、そんなこと感じさせないほど、街も人もあったかいもの」
上辺だけじゃわからない。
私が知らないことは、まだまだたくさんあるようだ。
それでも、私はこの街の底力を感じるし、未来が見えるようなんだ。