私もジュンも、自然と口数が減っていた。
あまりに衝撃的な事実を突きつけられて、心に受けたショックは、相当なものだった。
でも、博物館を出たジュンの顔は、なんだかスッキリしているように見えたんだ。
「ドイツには、過酷な歴史があんねんなぁ。東西分裂もそうやし、ナチスの独裁政治やホロコーストもそうや。でも、それがあって今のこの国や街があんねんなぁ」
通りに出て伸びをしながら、前を歩くジュンは、空に呟くように言った。
「俺なぁ、ドイツは、めちゃ好きやねん。みんな、人があったかいやろ?でもさ、こういう辛い過去があったからなんやなぁって思ったら、もっと好きになったわ。思わへん?」
いつになく真面目な顔のジュンにつられ、私も素直に思ったことを口にしていた。
「うん、そうだね。私もね、ドイツの人たちは強いなぁって思うんだ」
「強い?」
ジュンは振り返って、不思議そうに首を傾げる。