「ぐぁ……っ」
思いきり鳩尾にはいった強烈な彼の蹴りに、新は目が霞んでいるようだ。
歯を食い縛って、無理矢理立っているようだ。
「すごいねー? 俺の蹴り食らってんのに立ってんだ? さすが逢坂ントコだね?」
逢坂…………、
千哉のことだ。
「なん、なんだよ……、お前ほんと、この学校じゃ、大人しくしてた、じゃ、ねぇ……か」
「多勢に無勢……、勝てるわけないからね。」
和成さんは新の胸ぐらを掴んだ。
力のはいらない新は、なされるがままで。
「……とりあえず、紬ちゃん、俺にちょーだい?」
そう言って、和成さんはそのまま胸ぐらを掴んだ逆の手で、新の顔を殴った。
何発も、何発も。
止めたい、止めなくちゃ。
私のせいだ、私のせいなのに。
口も身体もなにもかもが硬直して、瞬きするまぶたでさえ動くことはなかった。
「……あれ? 気絶しちゃった?」
和成さんはぐったりした新をポイッと胸ぐらを掴んだ手を離して落とした。