その瞬間、後ろでガタンっと椅子の倒れる音がした。








「ちょ、紬サンなんで逃げるの!?



ってええええ!?




アイツ追っかけてきてる……!」








私はあのときの記憶がまだ鮮明だ。







あの、翔平さんの家にいた頃の、あの日からまだそんなに日はたってない。





千哉たちに出逢って衝撃的なことはたくさんあったけれど、恐怖はまだ…………はっきりと身体に残っている。








私たちはそのまま、端っこの空き教室に逃げ込んだ。




そして、鍵をしめると、荒くなった息を整えた。






少し無理をしたせいか、怪我した足がズキズキと痛む。







「……ちょ、と説明して紬サン。




どういうこと?


紬サン、

















雷神の、羽山(ハヤマ)和成と知り合いなのー?」








新の目が私を疑ってる目で、目をそらしたくなった。








「そ、れは……」





なんて誤魔化そう。


ここで本当のことを言ったらもう千哉たちといれないかもしれない。





それだけは、嫌だ。









その時、





ガタンッと教室のドアが音をたてた。


開けようとしたけれど、鍵のせいで開かなかった音だ。





しばらく時間稼ぎできるかな、と思った。







けれど、それは大きな勘違いで、






「ねぇ、紬ちゃん、いるよね?」







そう和成さんの声が聞こえて、勢いよくドアが吹き飛んだ。









蹴り飛ばされたドアの破片があり得ないくらいの力でへこんでいる。







「羽山、和成……」





新は眉間にシワがよって、唇を噛んでいる。