そして、3年生の教室の前に通りかかった。
その隣が化学室だ。
「紬サン、そんなに気にしなくても大丈夫。
むしろ、顔を知っとくために一度見といた方がいいかも。出くわしたら逃げるっていう意味で」
そう言って新はそっと私にだけわかるように3年生の教室にいる『ある人物』を示した。
「アイツだよ、男だけど、髪の毛後ろで縛ってる奴。いかにもチャラそうな、ヘッドホンしてるアイツ」
私の目は、新の言葉と視線の先を追った。
「え……っ」
そして、その彼を見たとき私は、全身が凍りついた。
なんの偶然か、ふと顔をあげたその彼と、目があった。
彼は私を見て目を大きく見開いた。
「やっば、こっち見たかも…………って、紬サン!?」
震え出した私の足は、新の手を全力でひいて、来た道を引き返した。