「……紬ちゃん、早くはいったら?」
「うわ……」
伊織さんがさっさと急かすもんだから、うわ、と本音が漏れつつ、私は千哉たちと別れて教室に入った。
◆◇◆
「紬、こっち」
真白くんの声がしてそっちへ向かう。
真白くんは一番窓際の席をあけていて、その隣に座っていた。
「そこ、僕の席だけど、使っていいよ。
窓際の席……特等席でしょ?」
「ありがとう……」
この学校に慣れてない私への配慮だと思う。
一番後ろの窓際なら、隣の真白くんしか関わらなくていいから。
「それと紬。紹介するね」
真白くんのその言葉と同時に前の席の男の子が振り向く。
「アンタが紬さん?」
その彼は、青いメッシュのはいった黒髪が印象的。
わりと背は高くて、なんていうか……、
お酒頼んでも年齢確認されなそう。
「俺は、新(あらた)っていうんだ。
同じクラスだけど歳は1つ上!よろしくな!」
「あ……えっと。よろしく。
私は、清水紬。」
そう自己紹介すると、知ってる!と返された。
「紬さん有名だもんね~」
有名……とは。
「紬、なんて顔してんの。
普通に有名に決まってるでしょ。
千哉が連れ回してるんだから。」
そっか……、そうだよね。
翔平さんの耳に入ったり……は、しないよね?