「ここが教室」
1-Cと書かれた教室の前に千哉はしゃがみこんだ。
どこまでも丁寧で、そのぬくもりのある背中を惜しく思った。
「ありがとう……、ごめんね?」
千哉にそう言って下りようとすると、
「うわ……っ」
少しバランスを崩して、
「おっと……」
後ろに転げそうになったのを、伊織さんが後ろから支えて、受け止めた。
周りの女子たちが悲鳴をあげた。
……とてつもない罪悪感と、支えてくれた伊織さんの顔がなんとなく怖くて顔がひきつる。
「……大丈夫?」
伊織さんが作られた王子様スタイルで私に微笑んだ。
「あ、うん……、ありがとう」
「いいから早く離れろよ」
「うわ……っ、」
小声でなんか言ったと思ったら、ブラックな伊織さん。
千哉ここにいるのに、いいのかな……
「ほらほら、千哉も紬も伊織も目立ちすぎ。
……退いて、僕が教室にはいれないでしょ?
はい、紬の荷物」
「あ、ありがとう……」
少し遅れて到着した真白くんが、軽く投げた私のカバンをキャッチする。