ち、千哉の服……
だけど、なんでダメなんだ?
チラッと伊織さんを見ると綺麗な顔をして大きく舌打ちをした。
「……千哉も、なんでこんな女連れてんの?」
そして、その怒りの矛先は千哉へ向いた。
「拾った」
「なんで、だってお前」
「みての通り、重症だったから」
千哉の言葉に、伊織さんは私に視線を向けた。
「……骨折?」
「も、あるし。
普通に、色々やばかった」
色々やばかった。とは?
トレーナーの下のあざがズキンッと痛んだ気がした。
……みられてないよね?
きっと倒れたときのこと言ってるんだ。
「……俺さ、もう女と関わんなって言ったよね?」
「……!!」
「“あんなこと”があったのに、なんでまた女なんて拾ってきてんの?」
あんなこと、そして……『また』。
私は、これは聞いてはいけない。
聞いてはいけない、デリケートな話のはず。
聞かないようにと後ろずさろうとも足が不自由して動けない。
耳を、塞ぎたくなった。
けど、それができなかったのは。
その瞬間に、千哉が私の手を強く握ったからだ。