そんな私たちの会話をぽけーっと見てる人たちにチラッと視線を向けてみれば、思いっきりそらされた。
「ち、千哉さんが謝った……」
「女に? 嘘だろ?」
あぁ、はっきり見えてくる。
千哉の、姿が。
ここでの姿が伝わってくる。
「……お前が余計なこと言うから」
「なにが」
「ちっとも怖くなんかねぇくせに」
「わかってるんだね」
明らかに怖がってねぇじゃん、と千哉はため息を吐くと、一階のその地に足をついた。
その瞬間、ザッと音をたて、彼らが姿勢を正したのがわかった。
そして、すぅっと息を吸った千哉に、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。
「コイツ、清水紬」
「……、」
「俺は、
それ以外を、
全く知らない」
千哉の口から出てきたのは、そんな言葉。
間違ってない。
嘘をつくよか賢明であると私も知っている。
だけど、そういう言い方をしたらどうなるのだろうと考えてみる。
千哉は、
孤高の狼のようだ。
誰も寄せず、誰にも見下されずただ自分の道をひたすら突き進むだけ。
止められたら蹴っ飛ばすタイプ。
邪魔されたら燃えるタイプ。
そして、
「なんでそんなやつと総長一緒にいるんですか?」
他人を簡単に、信頼しないタイプだ。