「てめぇ紬、なに蹴ってんだよ!」
千哉が頭をぐるんっと回して、背負われている私に文句を言う。
でも、落ちないように私の膝裏に通された腕は、その強さを緩めなかった。
またざわつく。
ヤンキーたちが、
「あの千哉さんを……」
「蹴った……」
と目を見開いて驚いているのが見えた。
「千哉、」
私がそう呼ぶと、私の言葉を聞こうと誰もが耳を澄ませた。
「こわいから、やめて」
思ったより自分の声は響いた。
怖いというのが事実かどうかは置いといて、この雰囲気のまま、私はその場所に行くのが嫌だったのだ。
「……え、あぁ、ごめんな」
「私にじゃないけどね」
「お前も謝れ」
「蹴って痛かった?」
「……一瞬だけな」
じゃあ謝らなくてもいいんじゃないかと思ったけれど、これは謝るまでグチグチ言われる。
「ごめんね?」
「これからは足出すな、口で言え」
「千哉に言われたくない」