「お、お邪魔しまーす……?」




のっそのっそと千哉の背中に乗ると、立ち上がった千哉の高さに変な声が出た。




「しっかりお邪魔しとけよ~、運賃取るからな」




「……お金はあげないよ」




「金持ってから言え、一文無しめ。」





たしかにそうか……と、彼の背中で思う。






妙に、人の温度が久しぶりで、温かくて。

その背中に全体重をダランとかけた。





それを合図のように、千哉は部屋の外へ出ようとドアに向かって歩き出した。






そしてそのとき、ふとあることを思い出した。






「……千哉、今さらなんだけどさ。




……ここ、どこ?」







私のその台詞は千哉の手がそのドアを開けたのと同時に空を切った。