「あ、意味わからねぇって顔してるな?
ぶっちゃけ、俺もよくわからねぇ」
「は?」
「目の前で倒れられて、さすがにほっとくわけにはいかねぇし」
「ア……」
「しかも傷だらけだし」
「ア……と、それは、」
「逃げなきゃ、とか呟いてるし」
「ア……えっと……」
……確かに、これではむしろ拾ってください。
な状況である。
雨の中、段ボールに可愛い子犬をいれて置いとくよりも質が悪い。
「……だから、連れてきた。
…………ごめんな」
彼の言葉に、どうして、謝るの。と言おうとした。
でも、言葉に出せなかった。
彼の首筋に、肩より這い出る刺青が見えたから。
そっちの人なんだなってすぐに理解した。
「……謝る理由…………なんてないよ」
「いや、俺実は……」
罰が悪そうに、言いかけた彼の口を人差し指でふさいだ。
そして、左手で、彼の右肩からのびるその刺青にそっと触れた。
「助けてくれて、ありがとう……」
そして、きれいだね、と呟くと、
彼は私の右手首をそっと掴んだ。
「……こわくねぇの?」
……翔平さんと同じ、そっちの世界の人。
でも、
「……どーだかね?」
この答えは曖昧にしておこう。