【紬Side】
痛いとか、そう言葉に出せたらどれだけ楽なんだろう。
踏み潰された足を引きずって、裸足のまま駆けてきた。
追いかけてこないのは、なんとなく予想がついていた。
翔平さんは、わかっているから。
私が、あそこ以外に帰る場所がないことを。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
正直、方向の感覚が全くない。
今、どこにいるかもわからない。
そのとき、私の頬にポタッと水滴が落ちてきた。
……泣いてるの?
私が?
そう思ったけど、その粒はどんどん強くなって、
ザァァアと音をたて出した。
「……寒、い」
だから、最初の水滴が涙か雨かなんて私にはわかるはずもないし、考えたくはなかった。
修太くんが、悪気もないのも知ってる。
彼処が、雷神連合が大好きなのも知ってる。
ただ、彼の隣は私の居場所じゃなかったのが、とてつもなく寂しいんだ。
「私って……、馬鹿だなぁ」
雨に打たれてる身体は、怪我をしているせいか熱を帯びていて、幸か不幸か周りに人はいないから、少し休憩できる。
道に、座り込んでいても、誰も通報とかしないだろう。
誰もいないんだから。
そう思って、道の脇の塀に手を添え寄りかかるように身体を預けた。
けれど、それが私の身体の緊張を一気にほどいてしまったのか。
私の身体は座り込むのではなく、そのまま前へと倒れた。
……身体に、力が入らない。
その時、私の上に影ができたのがわかった。
…………翔平さん?
私に、追い付いたの……?
とりあえず、逃げなきゃ。
「逃げ……なきゃ……」
影が何かいってるのがきこえる。
でも、
私はそれに答えることもなにもすることができず、そのまま意識を失うしかなかった。