「まァ、気絶しても止まるけど?
……お前にその力はねぇから無理だな」
痛かった、
なにより、修太くんから受けるというのが、痛かった。
翔平さんなんて、慣れっこなのだ。
いつもより今回はひどいけど、あの人の場合痛いのは、身体だけ。
でも、修太くんは……
そのとき、初めて私の目から涙がこぼれ落ちた。
今まで、どんなに辛くても、なにされても泣いたことはなかった。
だけど、初めて人前で泣いた。
翔平さんは、さすがに驚いたのか、ギョッとした顔をして立ち上がると修太くんの首の後ろに手刀を入れた。
すると、スゥッと修太くんの身体が傾いた。
それを、翔平さんが支えた。
今しかない。
修太くんを抱えて、手を塞いでいる、今しかない。
「紬、お前、」
翔平さんがなにかを言いかけたけど、私は震える足に全身の力を入れ立ち上がると、そのまま駆け出した。
「は!?
紬、おい……っ!!」
翔平さんが出すのは足でなくて声だけだった。
特に、追いかけられもしなかった。
私はそのまま、家を飛び出した。