「な、んで……ゲホッ」
私をもう一発蹴ったのは、他でもない
修太くんだった。
修太くんに目を向けると、その目は焦点があってなくて、まるで、壊れた人形のようだった。
「修太、くん……」
そう呟いたけど、修太くんがその声に反応することはなく、また、私を蹴り飛ばした。
「ど、して……」
「紬は、知らなすぎんだよ」
どうして、と洩らした私に組んだ足の上に肘をついて、偉そうに座ってる翔平さんが返答した。
「有名な話だ。
……雷神連合の幹部は、
“赤の狂犬” がいる……ってな」
「赤の……狂犬……」
言われなくても、それが修太くんのことを指していると、すぐに理解できた。
するとまた、執拗に鳩尾を修太くんが蹴ってくる。
わたしは、途切れそうな意識を必死に繋いで、翔平さんを睨み付けた。
「……そーなった修太は、血を大量に見るまで止まんねぇよ?
引き金は簡単だ、
一発、殴るだけ。
どーよ?
愛しの修太くんに蹴り飛ばされる気分は」
そんなアホな話あるわけない、と思ったけど、修太くんが現状そうである。
翔平さんから修太くんに目を向けると、修太くんの目はどこかへ飛んだまま、口元だけが歪んでいた。
歪むと言うより、
これは、笑っているんだと気づいた。