翔平さんは、私を近くに止めてあった黒い大きな車に押し込んだ。
「出せ」
そう呟くと同時にその車が発進した。
「ちょ……んぐっ」
抗議しようとしたその口は、翔平さんの骨ばった手によって塞がれた。
「うるせぇよ、黙ってついてこい」
「んーっ」
「てめぇ、反抗するなんて良いご身分じゃねえかよ、ぶん殴られたい?」
その目は本気で、私のことを手加減なしで殴ると思った。
私は、首を横にブンブン振った。
「だよなァ?」
ニヤリと笑う翔平さんは、とても恐ろしくて。
やはり1つの集団の総長だということを私に実感させた。
少しすると、車が止まった。
近すぎる……。
そう思って外を見ると、
……やはり、と思った。
そこは、私が十数分前までいた家なのだから。
歩いて5分の距離を車でいけば、あっという間だった。
なんて、冷静に分析なんてできない。
翔平さんは私の腕をまた無理矢理引っ張って、家に突き飛ばすようにいれた。
そしてそのまま前によろけた私の背中を蹴飛ばした。
翔平さんたちみたいに、喧嘩慣れしてるわけじゃないし、私の身体はそのまま床へ一直線に飛び込んだ。
転げた私を、翔平さんはもう一度背中を蹴った。
「……ゲホッ」
痛い痛い痛い痛い。
横になって咳き込む私の横腹を、次は思いっきり踏みつけた。
「……ぁっ!!」
声にならないくらい痛い。
痛い、それしか考えられなくて。
なんで、とか。
どうして、とか。
思うことは色々あったはずだけど、何発も浴びせられる重い蹴りにただひたすら耐えることしかできそうになかった。