少し早めについたそこには、これからデートであろう男女が待ち合わせ場所に多用している。
約束10分前。
私はスカートをパンパンと手で軽くはたいて、シワがないようにする。
そして、ようやく肩につくようになったセミロングの髪を外にはねてないか指に巻いて確認。
時計をみると、まださっきから2分しかたっていない。
楽しみなほどそれまでの時間は遅いし、多分だけどこれからの楽しい時間はあっという間なんだろう。
することがなくて、ミュールの爪先をトントンとして暇をもて余す。
そのとき、自分の鞄がわずかに振動したのが腕に伝わった。
取り出した携帯には、“修太くん”の文字。
あれ、もしかして遅れるとかかな?
それとももう、ついてたりするのかな?
その電話にでようと、画面をタップすると、すぐに彼の声が聞こえた。
『紬!ほんまごめんな、今すぐそこを離れてくれや!!!』
「え……?」
『バレた……アイツにバレたんや……!』
バレたって……それって……
そう思ったのと、トントンと、誰かに肩を叩かれたのは同時だった。
「え?修太くん?」
電話に出ながら、それに振り向いた。
修太くんだと思った。
けど、
「え……」
私の肩を叩いたのは、修太くんではなかった。