「ー…それで、今日も〝幼なじみ〟だから好きだよって言っちゃったんだ」

「…うん…」

私の話を聞いてくれていた美希が、〝またか〟という視線を送ってくる。

うっ…私だって分かってるよぅ…

でもさでもさ?

「慎ちゃんに嫌われたくないんだもん…」

私が〝幼なじみ〟としてじゃなく好きだなんて言ったら。

言ってしまったら。

慎ちゃんはなんて言うだろう。

優しいから付き合ってくれたりするのかな。

…それか優しすぎるから私に気を持たせないように避けられてしまうかも。

そんなのどっちも嫌だ。慎ちゃんを困らせたくないし、あの笑顔が見れなくなるのも嫌だ。

世界で一番、めぐの大事な好きな人だから。

「ー…めぐを嫌うはずないじゃん…むしろ…」

消え入るようなか細い声で、美希が呟く。

俯いているから表情はよく見えないけれど。

「美希?」

私が名前を呼ぶと、はっと顔を上げ、笑顔を見せる美希。

まただ。美希は慎ちゃんの話をすると時々困った様な、戸惑うような顔をする。

美希と慎ちゃん。席は斜め同士で近いけど、話をしている姿はあまり見たことがない。

まぁ美希は慎ちゃんに限らずあまり人と話したりする方ではないけど。

…なんかあったのかな?

気になるけど、いつも聞かない。

なんとなく聞いちゃいけない気がするから。

なんかあったらきっと話してくれるよね。

だって親友だもんっ!

「…美希ぐらい美人だったら慎ちゃんも好きになるんだろうな…」

誰もいない隣の席をちらりと横目で見る。

慎ちゃんの席。

鞄を置いた慎ちゃんは親友の奏君とどこかへ行ってしまった。

だから、私は学校に来るなり美希に話を聞いてもらっていたのだ。

ざわつく教室内では、誰も自分たちの話なんて聞こえていない。

美希は女の子の私から見てもすごく美人。

長いまつ毛に、つるつるの白い肌。さらっさらのストレートの髪なんて風になびく度にふわりと清潔感のある香りが鼻を掠める。

スタイルだって良く、顔だってちっちゃい。

美希になれたら…なんて何度考えたことか。

「…私はめぐになりたいよ」

いつの間にか声に出てしまっていたらしい。

美希が?私に?

「どうしー…」

〝どうして〟

聞こうとして口を開いた瞬間。

「そういえば

今日のHR、修学旅行の班決めするんだって」

分かりやすく話題を変えた美希。

まるでこの話はもうしないで、と言われているようで私はそれ以上何も聞けなかった。