でも、怒れないんだよなぁ。

だってこれは、サトタツが微妙な空気を吹っ飛ばしてくれた証拠だから。

大人なサトタツが、気を利かせてくれた証拠だから。


「んじゃ、俺もう帰るわ。もう暗いし、お前も気をつけて帰るんだぞ」

「うん。休み、楽しんでね」

「おう」


背中で手を振って、サトタツは校舎を出て行った。




体調不良だったという花ちゃんは、1日で職場に復帰した。

サトタツじゃないのかよーという冗談混じりの声も多少上がったけど、花ちゃんの回復を喜ぶ人が大半を占めていた。

サトタツがこの場にいないことに、誰も違和感なんて抱かなかった。


平時通りのホームルームを終え、席について次の教科の準備をする真田に歩み寄った。


「はい、これ」


プリントの束を差し出すと、真田が目をぱちくりさせた。


「サトタツに頼んでたんでしょ? 」