「……っ」


ダメだ。

サトタツの気持ちも真田の気持ちも知らない部外者が、口出ししていいことじゃない。

誰もそんなの望んでない。

こんなの、正しくない。


「……ごめん、やっぱりなんでもない」


バツが悪くなって、視線を床に移す。リノリウムの見慣れたそれが、妙に心地悪くさせた。


「……」


視線を下げたままの私の頭上で、ふっと空気が震える気配がした。

刹那、大きな手が頭の上に乗せられる。


「なっ……なに……」

「いや? 純粋でいいなぁと思ってな」

「……バカにしてんの?」

「してねーよ」


大人の顔をしたサトタツが、ぐりぐりと私の頭を撫で回す。

おかげで、練習のあと束ねた髪はぐしゃぐしゃだ。