「そうしたいのは山々なんだけど、俺、明日から2日間休みもらってんだよ」

「えっ、ずるい! 冬休み終わったばっかりなのにっ」

「ちょっと用事あってさ。1、2学期必死に働いたおかげで有給溜まってるから、まとめてもらうことにしたんだ。ま、社会人の特権ってヤツだな」


ふふんと鼻を鳴らして、サトタツは得意げだ。

むぅ、ずるいなぁ。いいなぁ。


「ってことでこれ、よろしくな」


イエスともノーとも言わない私にプリントを手渡して(というより押し付けて)、サトタツはスタスタと歩いていく。

瞬間、何かが脳内を引っ掻いた。


待って、まだ。

まだ、何か。


「ねぇ!」


“何か”の正体を掴めないまま、考えるよりも先にサトタツの背中を呼び止めていた。

私の声が思いの外大きかったのか、サトタツが目を丸くして振り返る。


「な……なんだよ?」