私達が今教わっているのは数IIで、数Ⅲは理系選択者だけが3年生で習う。

真田は私と同じ、文系選択のはずなんだけど……。


「あいつ、すげぇよなぁ。文系選択してるくせに、理系のやつらより数学勉強してんだぜ」

「ぶ、部活もしてるのに……」


さすがと言うか何と言うか。

若干引き気味の私とは対照に、サトタツは優しく目を細めて真田を語っている。

普段は、ふざけたりしながらクラスの男子達と一緒になってはしゃいでいるサトタツ。

こんな表情、見たことない。


「ほんとはホームルームの後に渡そうと思ってたんだけど、渡しそびれちまってさ。代わりに真田に渡しといてほしいんだよ」

「代わりにって……明日、自分で渡せばいいじゃん」


なんでわざわざ私を介すの。

怪訝に思って眉を顰めると、サトタツは困ったように口角を上げた。