駆け足で追いつくと、視線だけを私に向けた康介。


「お前、ちっちゃくなったなぁ」

「なっ……あんたが更にでかくなっただけでしょ!?」


んもう、失礼なこと言うんだから!

お尻に蹴りを入れてやると、小さな呻き声をあげた康介は大袈裟に痛がってみせる。


「ってぇ……! それが仮にも女子のすることか!」

「仮にもって何よ、仮にもって。もう一発食らいたいわけ?」

「ゴメンナサイ」


駅へと続く道に私達の無邪気な声が響く。

みんなが言うような関係じゃなくて……うーん、そうだなぁ、キョウダイみたいなもんかな。あ、もちろん私が姉ね。そこは譲れない。


「で、どうなの? 次、準々決勝でしょ?」


前に回り込んで聞いてみる。

そんな私に、康介はにやりと笑ってみせた。


「余裕」


Vサインをした康介は、右の口角を上げてはっきりと言い切った。

康介がこんな風に笑うのは、自分のしてきたことに絶対の自信を持ってる時だけだ。

それを見た私が抱くのは、揺らがない信頼と、ほんのちょっとの羨望。


「余裕こいてると痛い目見るから、ほどほどにしなさいよー」

「うるせー」


醜い感情を悟られるのが怖くて、私はいつも通りを振る舞った。




マックのテーブルに、向かい合って座る。

家の最寄駅の前だから、同じ学校の生徒はいない。