水分を補給して空を見上げる。

日が傾いて、オレンジ色に移り変わりつつある空を。


「はぁ……」


もう一度見たい景色がある。だから私はこの高校に入ることを決めた。

だけど……今の私には、夢のまた夢だ。


「ちづ」


不意に名前を呼ばれ、顔だけを声のした方に向ける。

ま、この呼び方をするのは1人しかいないから、確認しなくてもわかるんだけどね。


「康介(コウスケ)」


長谷(ハセ)康介。同じマンションで、幼稚園からの腐れ縁。

ようするに、幼なじみってやつ。


「練習サボって何しに来たの」

「お前こそ」

「私は休憩中」


サッカー部に所属している康介は、2年生ながらもレギュラーの座を勝ち取っている。

だけど、自由過ぎる性格が玉に瑕だって、次期キャプテンの南山にぼやかれたことがあるんだよ。康介には言わないけどさ。

今回だって、私にちょっかいを出しに来たに決まってるんだ。

じゃなきゃ陸部に用なんてないもんね。


「帰りにマック寄って帰ろうぜ、って言いに来た」

「そんなこと、帰りに言えばいいのに」