「……ごめんね。たかが怪我くらいで、なんて言っちゃって」

「いや、俺のことを考えて言ってくれてたのわかってたし」


それに、と康介が続ける。


「発破かけてくれたおかげで、尻に火が付いたから」


康介の瞳は確かな色を取り戻し、また前を向き始めた。

走り続けて、見たことのない未来をその目で捉えるために。


「絶対ピッチに戻って大暴れしてやる」


迷いのない力強い意志表示に、私は何度も頷いた。




チャイムが鳴るギリギリに教室に戻った私は、席に着くなり古典のノートの最後の1ページを切り離した。

そしてペンケースの中から、書き易さに定評があるシャーペンを取り出す。


ノートの1番上の行には、『リョータへ』。