視界がじわりと歪んで、その姿ははっきりと見えなくなる。


「遅いよ、バカ康介……っ!」


頬を涙で濡らす私の頭を、康介が困ったように笑いながらぐりぐりと撫でた。


「ごめん、心配かけた」

「心配だけじゃなくて迷惑もだバカ」

「……そうだよな。走れてなかったって、南山から聞いた。ごめんな」


周りの視線が四方八方から突き刺さる。

これでまた色々噂されたり冷やかされたりするんだろうなぁ。

でも今はそんなこと、どうでもいいんだ。

ここに康介がいる、それだけでいいんだ。


「ありがとな、ちづ」

「……なにが」


顔を上げると、康介がセーターの袖で涙を拭ってくれた。

なんかむずがゆい。普段はこんなことしないくせに。


「一緒に頑張ろうって……走り続けようって言ってくれたの。嬉しかった」

「……うん」

「俺は何があってもサッカーを捨てられないんだって、怪我したからこそできるプレーがあるんだって、お前が真正面からぶつかってくれたから気付けたよ」


あぁ──届いていた。

私の想いも、リョータがくれた言葉も。

ちゃんと、康介が立ち上がるための力になってた。